英国の庭に咲くバラの物語

イギリスに暮らしていた頃
今でも心に残っている風景があります。

それは庭や街のあちらこちらに咲く、
色とりどりのバラ。

Screenshot

白、ピンク、黄色、そして赤。

家の庭や玄関先。
パブの壁や、公園の生垣。

バラは、特別な場所だけに咲く花ではありませんでした。

人々の暮らしのすぐそばに、
ごく自然に咲いている。

そんな英国の風景が、私はとても好きでした。

季節になると、街を歩いているだけで
ふとバラに出会う。

塀の向こうから顔をのぞかせるバラ。
古い家の壁を彩るバラ。
庭の中で、のびやかに咲くバラ。

そのひとつひとつに、
英国らしい暮らしの風景がありました。

そして、そんなバラの風景の中で、
私が特に心惹かれたのが、赤バラでした。

赤バラは、イングランドの国花。

中世の「薔薇戦争」では、
ランカスター家が赤バラ、
ヨーク家が白バラを象徴として掲げたとされ、

その後、両家のバラを組み合わせた
「テューダー・ローズ」が生まれました。

ひとつの花が、
長い歴史の中で人々の記憶と結びつき、
今も英国を象徴する存在として残っている。

そう思うと、
いつもの庭に咲いていたバラが、
少し違って見えてきます。

美しいだけではない。

そこには、
長い歴史と、暮らしと、
人々が大切にしてきた想いが重なっている。

私にとってバラは、
イギリスで過ごした時間を思い出させてくれる花です。

そして今、私はその中でも赤バラを、
花そのものとじっくり向き合う
「一種活け」でも楽しんでいます。

一種類の花だからこそ見えてくる、
一輪一輪の表情。

その美しさを、
次の物語でお話ししたいと思います。

英国の庭に咲く、バラの物語。

それは私がイギリスで出会った、
「花のある暮らし」の物語でもあります。

目次